南スーダンPKO視察を終えて

 平成23年11月25日

 

 我が国は国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の参加を決定。
司令部要員を二名派遣すると共に、来年早期に陸自の施設部隊を展開する準備を進めている。
私は、自民党国防部会長という立場で元防衛庁長官、党政務調査会長代理の中谷元氏と共に与党に先駆けて現地を視察した。

 1、主な日程 
11月21日【ウガンダ】
   ・エンテベ国連補給基地視察(ユーリ・シェレプ副所長との面談)
11月22日【南スーダン】
   ・カウナック南スーダン多国間担当局長との会談
   ・ヒルデ・ジョンソンUNMISS事務総長特別代表との会談
   ・オビUNMISS軍事司令官との会談
   ・和田スーダン大使との意見交換
11月23日【南スーダン】
   ・JICAプロジェクト視察(河川港及び市内橋梁)
   ・クリストファー・ダッタ在南スーダン米国臨時代理大使との会談
   ・グレース南スーダン共和国外務・国際協力副大臣との会談
   ・リー在南スーダン中国大使との会談
   ・日本国UNMISS連絡調整事務所激励
   ・南スーダン在留邦人(JICA・NGO等)との意見交換
11月24日【南スーダン】
   ・自衛隊施設部隊宿営予定地(バングラディッシュ部隊宿営地)視察 

2、視察の主な項目
①陸上自衛隊の設部隊を派遣する意義は何か。UNMISS及び南スーダン政府は、自衛隊にどのような活動を期待しているか。
②想定される活動拠点である首都ジュバ周辺の治安情勢。また活動場所について、ジュバ以外の要望はあるか。
③内陸国である南スーダンに対し、部隊及び資機材をどのように展開・輸送すべきか。
④現在の武器使用基準で、自衛隊の活動に制約がかかることはないか。  等

3、南北交流における諸課題
 CPA(南北スーダンの包括的和平合意)の未履行の課題
 ・アビエ地域の帰属
  →6月20日、南北両当事者は、アビエ地域の行政・治安暫定措置に関する合意文書に署名。9月30日までにエチオピア軍を主体とする国連アビエ暫定治安部隊(UNISFA)の駐留・展開を受け、南北両軍がアビエ地域から撤退を完了する予定であったものの、未完の模様。
 ・南北国境線画定
  →約8割が画定し南北間で合意済み、残り2割について南北間で協議。
 ・国境地域の治安措置
  →南北国境地域の治安措置は独立後当面の間、5月31日に合意された①共同政治・治安メカニズム及び②共同国境地域の設立により手当てされることとされた。9月18日、第一回共同政治・治安メカニズム(JPSM)会合において、検問所の設置、(北)スーダン国軍(SAF)、(南)スーダン人民解放軍(SPLA)及びエチオピア軍から成る監視活動等の国境線管理につき合意。
 ・南コルドファン州及び青ナイル州問題
  →現在、スーダン領南コルドファン州に残存するスーダン人民解放軍北部勢力(SPLA-N)部隊とスーダン国軍との間で武力衝突が継続中。南スーダン政府はSPLA-Nに対する支援を否定している。スーダン領に残留するSPLA-N将兵の武装解除・国軍への統合が課題。スーダン領青ナイル州でも同様の武力衝突が発生していたが、11月13日、スーダン国防大臣は同州のSPLA-Nの掃討完了を宣言した。
  →両州の具体的な統治のあり方を検討・決定する住民協議の実施が遅延している状況。
 
4、主なポストCPA(南北スーダン包括的和平合意)課題
 ・市民権
  →スーダン在住の南スーダン系住民に対する措置について、南北間で継続協議中とされるも、スーダンでは新国籍法で南スーダン人のスーダン国籍の自動的喪失を規定。9ヶ月とされる移行期間中に南スーダン系住民が国籍及びIDの取得等必要な手続きを完了できるか不透明な状況。
 ・石油配分
  →南北両国間で、スーダンを通るパイプライン使用料を巡り継続協議中。一時はスーダン側が32ドル/バレルを示しているのに対し、南スーダンは国際標準として0.4ドル/バレルを主張。南北両国にとり、石油収入は政権運営上極めて重要であり、どのような妥結を図るかが注目される。
 ・通貨
  →南北両スーダンとも、南スーダン独立直後に新通貨を発行し、8月中に旧通貨との交換完了。
 ・債務
  →南北間では、国際社会が向こう2年間にわたって債務免除手続きを開始することを条件に、北部スーダンが約366億米ドルの対外債務金額を引き受けること(ゼロ・オプション)を決定。スーダンは、現在、重債務貧困国(HIPC)イニシアティブによる債務救済措置を国際社会に対して要請中。
 
5、物資の輸送について  

地図その1(←クリックください)

   日本からの主な物資の輸送はケニアのモンバサ港に船で運び、大きな輸送機(例えばロシアのアンドロフ機)で、空路でウガンダのエンテベ空港を経由、空路、若しくは陸路でジュバに運ぶことが適当と思われるが、エンテベ~ジュバの陸路はほとんど未整備で通ることすら難しい。
  
6、南スーダンにおけるUNMISSの展開について
地図その2(←クリックください)
①  ほとんどの国は司令部要員の派遣。
②  PKOミッションの歩兵部隊は6個大隊。
インド2個、ルワンダ・モンゴル・ネパール・ケニアが各1個ずつ。(うちネパール部隊は緊急支援、及び他部隊支援の予備部隊。)
歩兵部隊の任務はパトロール・プレゼンス確保・文民の物理的保護等。
③  施設部隊は中国、日本、韓国。
日本は首都であり、比較的治安が安定しているジュバ近郊。中国はすでにワオで活動中。韓国については未定。
 
日本の武器使用基準により自衛隊による応戦に限界があることについて、司令官より、国連はマンデートで全ての軍、文民、施設、人員全てを保護する。私はそのためにどの地域の部隊も動かせる。予備大隊も派遣できるし、編成も自由。自衛隊は我々が守ると表明。


▲ヒルデ・ジョンソン事務総長特別代表
 

▲オビUNMISS軍事司令官
 
7、JICAプロジェクト視察(河川港及び市内橋梁)
<港湾>
  ・現在、北のスーダンからの物流はストップしている
  ・ジュバ河川港の拡張工事により北のスーダンとの物流が増強される。
  ・帰還難民も河川港を使用。
  ・港の拡張(無償資金協力)と運営(技術協力)というハード&ソフトの融合。
<道路>
  ・ジュバ市内の幹線道路は未整備。特に物流道路の橋梁の整備が急務。現在、17本の要望のうち、特に優先される6本を改修。残りのうち5本は優先的に行いたいが、日本の予算が下りるかがカギ(5橋で10億円程度)。耐久性のある橋の建設は南スーダンの技   術では不可能。
・ウガンダからの幹線道路(物流ルート)は一つのみ。ナイル川を渡る橋は、現在、軍が架けた仮設橋一本のみ。市内の混雑緩和の為、環状バイパス道路および、新ナイル橋を計画中。新ナイル橋は日本の支援。また、環状道路から市内に向けた物流道路も要望がある。


▲市内橋梁建設現場

 
8、自衛隊施設部隊宿営予定地視察(現バングラディッシュ部隊宿営地)
  ・カビル施設部隊長より説明。バングラディッシュ部隊のこれまでの6年間の任務と自衛隊施設部隊との任務の性質は全く別のもの。国連スーダンミッション終了に伴い、撤退することとなった。
  ・日本の施設部隊は、敷地の基礎的部分の整地等を担当する事になる。
  ・これまで6年間の活動で誰も死者は出ていない。しかし歩兵部隊に対する外部からの攻撃はあった。
  ・歩兵部隊と施設部隊は指揮系統が独立しており、たとえば日本の施設部隊が他国の歩兵部隊の下に位置づけられるようなことはない。
  ・国連本部は現在12月31日までにバングラディッシュの撤退と新部隊の展開を考えているが、現時点でも具体的にいつ撤退しいつ新部隊が入るかの情報はない。
  ・UNMISS本部は、国連本部に対し、バングラディッシュの施設部隊の展開の6カ月延長(来年7月1日まで)を提案しているが、最終的な決定はまだ出ていない。もし撤退すれば、国連からバングラディッシュ本国へ相談されることになる。
   ・6カ月延長の理由は、バングラディッシュのプロジェクトでまだ未完成の部分があり、それを仕上げてから撤退するため。日本の任務との関係性はなし。
     ・例えば日本がジュバを担当し、引き続きバングラディッシュがその他の部分を担当するなどといった具体的な実施要領はまだ示されていない。
   ・建設資材、部隊の食料等はUNMISSが調達し提供する。バングラディッシュ施設部隊は、マンパワーと機材を提供する。資材が不足して工事が遅れるようなことはなく、UNMISSが必要資材を調達したうえで初めてプロジェクトを発注する。 
   ・バングラディッシュの重機を残してほしい場合は、日本政府からバングラディッシュ政府に正式に要請があれば検討される。
   ・活動はすべて、UNMISS本部の要請による。要請があれば他国の活動の支援をすることもある。 


▲バングラディッシュ部隊宿営地
 
9、日本国UNMISS連絡調整事務所・外務省南スーダン連絡調整事務所激励
  ・訪問日前日の夜、内閣府(防衛省・外務省の出向)による2名の連絡調整官が着任。訪   問日当日に事務所開設。
  ・大使館員の人員が不足しており、他からの応援が必要。


▲UNMISS連絡調整官
 
10、南スーダン在留邦人(JICA・NGO等)との意見交換
      ・大使館員、JICAを始め、UNDP(国連開発計画)、UNMISS職員、各種NGO・NPO等の在留邦人と意見交換。
  ・在留邦人からも南スーダン大使館の一刻も早い開設を要望。治安の分析と情報共有の必要性を指摘。また南北スーダンの大使館員の増強も急務と指摘。
  ・顔の見える支援の重要性を指摘。日本プロジェクトの完成式典などに政府・国会議員の出席があれば、国内外への宣伝効果とともに、在留邦人の士気高揚にも寄与する旨要望。
  ・震災の影響等もあり、海外に目を向ける日本国民の減少もあるが、国際社会に関与し続けるという、わが国の断固たる姿勢の表明が重要と指摘。


▲南スーダン在留邦人(JICA・NGO等)との意見交換
 
11、考察
 1)受け入れ体制について
  南スーダンでは、米国・英国・独国・中国等、主要国の大使館が設置されているが、わ  が国は  未だ設置されておらず、スーダン大使館の職員を兼務させている。職員の数が少  なく、スーダン大使は17回もハルツーム-ジュバを往復し、他の職員も頻繁に出張して  いるが、とても対応できる人数ではない。早急に大使館設置する要あり。ウガンダ大使館  も職員が10名であるが、今後の業務を考えると、人員を増員するとともに、エンテベに  も事務所を開設すべき。
 2)治安について
  ジュバおよびその周辺の治安は、現時点では安定している。民衆も国連および外国人に  対し友好的である。他方、南スーダン北部の国境地帯に属する州の情勢は依然流動的であ  る。日本の活動場所はジュバのみとの認識がUNMISS等でも共有されており、現段階  の状況では、施設部隊の活動に支障がでるような大きな脅威は見受けられない。
 3)自衛隊施設部隊に期待される役割
     UNMISS・南スーダン・PKO参加諸国は過去の実績に基づく日本の施設部隊の技術力・速度等に大きく期待。日本の施設部隊が貢献できる分野は非常に重要。道路・橋・河川港の建設・修理の要望。ジュバだけでも案件多数。基礎的インフラの整備は、治安と安全確保面でも重要であり、UNMISS全体の信頼性向上に寄与する。今後は、単に道路等の建設にとどまるのではなく、南スーダン軍・民間人・青年を雇用・下請けさせることによって、自衛隊の技術を教授し、技術訓練ができるようにすることも、長期的な国づくりに為に必要である。
   4)部隊の展開および資機材の輸送について
  現在、北のスーダンとの河川水運が止まっており、ケニアのモンバサ港からの陸路およびウガンダのエンテベ空港からの陸路が想定されるが、エンテベ空港および国連補給基地の活用をさらに検討すべき。エンテベに物資集積拠点を置き、大型輸送機で運んだ物資・機材を適宜ジュバへ空輸できる体制を構築すべき。またジュバには必要な時に必要なものが手に入らないので、資機材のスペアパーツの持参は必須である。陸送も重要。ウガンダ。南スーダン間の国境付近の部分が未舗装。米国・日本・世銀が担当する整備を急ぐべき。現在グルより80kmのアチュアクまでの区間を世界銀行が、アチュアクより国境の町ニムレまでの40KmがJICAの円借款によって舗装予定。国境からジュバまでは米国が受け持つ。完成すれば、輸送能力の大幅向上が望まれる。特に重視すべき。ジュバにおいても舗装道路が少なく、雨季の交通はさらに困難になる。JICAのインフラ整備事業とも連動し、早急にインフラを整えることが重要。また、ジュバには自衛隊が休養できうる施設はなく、この面でもエンテベ・カンパラを重視すべき。また、マラリアの脅威は非常に高く、対策は十分になされるべき。
   5)武器使用基準の緩和について
 ジュバおよび周辺の治安はおおむね安定しているものの、一般的な犯罪は増加傾向。また、南スーダン北部の情勢は流動的であり、注視が必要。今回は調査できなかったが、モンバサから想定される陸路補給路も夜盗・山賊出没の懸念が拭えない。UNMISSに所属する以上、国際協力を円滑に進めるためには、万が一の際の自衛体制を万全にすべき。わが党は現在、従来のPKO法を包含し、イラク復興支援やインド洋における補給支援活動のような特別措置法ではない一般法である「国際平和協力法案」を議員立法として衆議院に提出している。この中には、自衛隊の武器使用基準を緩和し、いわゆる駆けつけ警護等にも対応できる法的措置がとられている。これを一刻も早く成立させ、自衛隊が自らの自衛に支障が出ない体制を構築すべき。
   6)宿営地について
 国連により、バングラディッシュの施設部隊の展開が6ヶ月間延長された場合は、入れ替わりで使用する予定の宿営地施設が使えず、天幕露営の必要性あり。
   7)わが国の南スーダン支援体制について
 今回のPKOには「長期的な国づくり」がマンデートとして入っている。南スーダンは国としてのハード面のインフラのみならず、統治機構・教育・医療・文化等ソフト面でのインフラも脆弱である。あらゆる面で国の基本が整備されていない状況を踏まえ、わが国としても、国際社会とともに息の長い支援を続けていく必要がある。ハード面においては、施設部隊とJICA等の民生支援を車の両輪とし、まずは物流体制の改善を図るべきである。また、食料確保のための農業支援も重要である。青少年のスポーツ交流も含む教育支援も進めるべきである。そのためには、わが国の支援体制の基盤整備は欠かせず、南スーダン大使館の一刻も早い開設とウガンダ・スーダン等周辺国大使館の増強が急務である。また、JICA事業を拡大させ、NGO支援も拡充させるべきである。南スーダンは、アフリカの中央に位置する戦略的な重要性とともに石油資源に対する投資に関しても重要度が高い国である。未だ投資に関しては中国などに比べ日本企業は積極的ではないが、社会インフラの整備によって投資環境の整備を図るべきである。また、北のスーダンに中国が多大な影響を持つゆえに、南スーダンにおいては中国への警戒心も強い。アフリカ中央部における戦略的重要性を考慮し、特に官民を挙げて、米国との連携を強化すべきである。南スーダンは陸路水路とも劣悪であり、移動・輸送手段としてのヘリコプターの需要は高い。自衛隊が輸送任務を引き受け、ヘリコプター部隊を派遣することについても可能性を検討すべきである。そのための法改正が必要であれば、これも行うべきである。また、マラリア対策は自衛隊及び民生の活動においても重要であり、日本企業とのジョイントベンチャーで生産しているマラリア蚊に対する防護処理がなされた蚊帳を活用し普及させるなど、わが国の技術を活かした支援を検討すべきである。
 
12、総括
   UNMISSでは、多くの国々が、主体的・積極的に各分野においてPKO活動を実  施していた。今回の視察を通じて、わが国及び自衛隊に求められる活動は、単に施設部隊の派遣のみならず、治安・警護・医療・輸送等、多分野にわたっている。PKO活動の意 義や各国の取り組み、自衛隊の能力・資質を考えれば、日本はもっと多面的・多機能的な分野での活動が可能である。そのためにも現在制約がかかっている点は、早急に法改正を 実施して、フルスペックで活動が実施できるようにすべきである。政治には、国民の理解を深め、自衛隊及び民生支援の活動に支障がないよう法整備も含めた各種施策を滞りなく 推進する義務がある。
 政府・民主党は、UNMISSに対する施設部隊派遣を日米首脳会談前に、急きょ決定したが、その後の準備活動や国民の理解を得る説明に関しては積極的ではない。未だ外務・防衛の政務三役による現地の視察もされていない。陸上自衛隊の施設部隊は国際的な評価も高く、南スーダン支援は上述したように本来極めて意義のある国際平和協力活動であることを国民に説明することは政府与党の責務である。
 しかし、現在の民主党政権の動きは遅く、派遣を決定した当事者意識に大いに欠ける。我々は与党民主党に先駆けて現地を視察し、直接情報を収集したが、政府民主党は自らが政治家の目でPKO派遣する国の実情や実施の現場を把握して国民に対する情報提供と支援の意義の説明を怠ってはならない。南スーダンに対するわが国の支援の行方を国際社会は注視しており、真に効果的な支援の為には、国民の理解協力が必要不可欠であることを強く認識すべきである。
 
13、結論
   PKO派遣は必要であるが、その前に、任務の多様性、隊員の安全確保及び国連PKO参加国との協力支援体制を強化するための法整備を行う必要がある。一般法の制定に時間がかかるとすれば、政府は早急に閣法においてPKO法を改正し、武器使用基準の緩和を図るべきである。
 
14、最後に
 一日に50バレルの石油を産出する南スーダンがパイプラインも製油所も北にあることによって日本よりも高い石油を使っていることに驚き、政治の力はやはり重要と実感すると共に、我が国はODAでも自衛隊のPKO派遣南スーダンの国づくりに大きく貢献するのであるから、石油のみならず、豊富な地下資源の開発にも協力し、日本の国益に利することがきわめて大切であると認識しました。
 
  

以上