12月13日~15日:党国防部会を代表し、訪韓致しました

1 目 的
 本年3月に発生した北朝鮮による韓国哨戒船天安撃沈事案に続き、11月に北朝鮮が延坪島を砲撃したことにより、朝鮮半島を始め東アジア情勢が極めて不安定な状態となっている。この地域の平和と安定の為には、日米韓の緊密な連携が必要不可欠となる。
 そこで、我が党は、韓国与党のハンナラ党国会議員、政府高官、軍高官との意見交換を行い、朝鮮半島の軍事情勢を正確に把握することで、我が党の安全保障政策に資すること、また韓国国会議員、政府高官等との関係を強化することを目的とする、訪韓団を派遣した。
 
 
2 団編成
団長 岩 屋   毅 国防部会長(シャドウ・キャビネット防衛大臣)
    中 谷   元 衆議院議員
    今 津   寛 衆議院議員

随行 松本 好史 党本部政務調査会職員
 
 
3 日 程
平成22年12月13日(月)~12月15日(水)

12月13日 田麗玉(チョン・ヨオク)国土海洋委員会委員
                       (日韓議員連盟安保・外交委員会幹事長代理)
12月14日 金在信(キム・ジェシン)外交通商部次官補
        章光一(チャン・グァンイル)国防部国防政策室長
        金章洙(キム・ジャンス)国防委員会委員
        鄭柄国(チョン・ビョングック)放送通信常任委員長
                        (日韓議員連盟安保・外交委員長)
12月15日 白善燁(ペク・ソニョプ)将軍
        戦争記念館視察      
 
 
4 視察地
大韓民国ソウル特別市
 
 
5 意見交換
1)田麗玉(チョン・ヨオク)国土海洋委員会委員(日韓議員連盟安保・外交委員会幹事長代理)
延坪島砲撃の予兆はあったのか、日米韓による合同訓練の可能性、中国・北朝鮮の軍事同盟の強固さについて、金正恩氏への権力継承等について、意見交換を行った。
 
・前回の韓国哨戒船天安撃沈事案では、北朝鮮による攻撃であるか否か、韓国民の中でも意見の分かれるところがあったが、今回の延坪島砲撃は韓国民一体となり怒りに震えているとの見解を示した。
・延坪島砲撃の予兆については、青瓦台内部ではあったかもしれないが、定かではない。政府への韓国民の批判が高まっているが、対北朝鮮強硬派の新国防長官に交代し状況はよくなるのではないかとの見解を示した。
・日米韓の合同訓練の可能性については、その必要性は認めつつも、過去の不幸な歴史から韓国民の中には抵抗感があること、さらに菅総理の朝鮮半島有事に際しての自衛隊の韓国への派遣については、国内で不信感が根強いとの見解を示した。また、中国と北朝鮮の軍事同盟の強固さについては、もはや以前のような強固な関係ではなくなっているとの見解を示した。
・金正恩氏への権力継承問題については、その若さ、能力の問題等から極めて危険であるとの見解を示した。2年後継承するとの事だが、3~4年の内に北朝鮮内部で大きな危機を迎えるのではないかとの見解を示した。
・北朝鮮では、情報流入により、韓国の方が幸福であるとの認識が広まりつつある。北朝鮮内では、現状のような苦しい状況が続くようであれば、戦争となっても構わないと考える人民が多いであろうとの見解を示した。
 
○我が方からは、軍事力をはじめ中国の力が増大しており、北朝鮮が中国の後ろ盾により、朝鮮半島情勢が不安定になることは好ましくないとの見解を示し、日韓さらには米国が連携して中国に対応すべきであるとの見解を伝えた。
  
2)金在信(キム・ジェシン)外交通商部次官補
 我が国における外務審議官にあたる金在信外交通商部次官補と、延坪島砲撃に関して国連安保理、ICC(国際刑事裁判所)等に訴えないのか、在韓米軍が反撃する可能性、島嶼防衛の増強について、北朝鮮の核開発について、NLL(北方限界線)に関する韓国・北朝鮮さらには周辺各国の認識、金正恩氏への権力継承について、朝鮮半島統一のシナリオ等について意見交換を行った。
 
・韓国は北朝鮮に対して、人道的な支援は必要であるとの基本政策をとってきたが、今年に入って2度にわたる暴挙を行った点を深刻に受け止めており、国連やICCにおいて曖昧な声明を出すことで終わらすべきではないとの見解を示した。
・今回の延坪島砲撃を受けて、島嶼防衛において武器の増強等を始め、強化する旨説明を受けた。
・韓国は北朝鮮の核開発に対して、核開発で応じるつもりはなく、北朝鮮の核開発阻止に全力を注ぐ政策を取るとの説明を受けた。
・NLLに関しては、韓国・北朝鮮ともに70年代後半までは平和的に運用してきた。北朝鮮の不合理な要求を受け入れていてはきりがないとの見解を示した。また、中国はNLLに関して正式なコメントは出していないが、中国が介入すべき問題ではないとの見解を示した。
・金正恩氏については、その能力等を含め予測が付かず、分析に時間が必要であるとの見解を示した。
・北朝鮮崩壊による統一のシナリオについては、北朝鮮を経済発展させ南北格差を縮めた上で統一する方法が考えられるとの見解を示した。
・最後に、これまで韓国と日本が成熟した関係を築いてきたのは、自民党の貢献が大きく、外交関係は与野党関係なく良好な交流を続けるべきとの見解を示した。
 
○我が方からは、韓国政府の対応があまりにも慎重であるとの印象を受けること、国連等に働きかけるべきであるとの考え、さらには中国にも今回の事案に関しては、北朝鮮の擁護に回ることのないよう日米韓連携して対応していくべきである旨伝えた。
 また、韓国政府が北朝鮮の核開発に対して核開発で応じないとの姿勢に対し、我が国も全く同じ考えである旨伝えた。
 
3)章光一(チャン・グァンイル)国防部国防政策室長
 我が国における防衛政策局長にあたる章光一国防部国防政策室長と日韓の軍事協力について、延坪島砲撃に対する反撃の成果等について意見交換を行った。
 
・日韓の軍事協力については、韓米軍事演習における自衛隊のオブザーバー参加、同様に日米軍事演習における韓国軍のオブザーバー参加が実現したことにふれ、今後も軍事協力を強化していくべきであり、その際、秘密保護協定やACSAの締結について検討することも必要ではないかとの見解を示した。
・延坪島砲撃に関して、島の面積等からしてK9自走榴弾砲の配備は少なかったが、半分が機能しなかったとの報道は誤報であるとの説明を受けた。自走榴弾砲6門の内、1門は事前の演習により弾詰まりにより使用できなかったこと、残り5門の内2門は北朝鮮からの砲撃により電気通信機器等が損傷を受けた事により、使用できなかったのが事実である旨説明を受けた。
・韓国軍による対応射撃は一応の成果があったとの見解を示した。また、北朝鮮の司令部に反撃したものではなく、発射地点を狙ったものであるとの説明を受けた。
 
○我が方からは、合同演習での双方のオブザーバー参加は好ましいことであると同意した上で、韓国の軍事的な危機は日本にとっての危機でもあるとの見解を示し、日韓の軍事協力をさらに進めていくべきであるとの見解を伝えた。
 
4)金章洙(キム・ジャンス)国防委員会委員
 陸軍大将、国防長官を歴任した金章洙議員と、今後の北朝鮮の動向、金正恩氏への権力継承、中国の北朝鮮に対する対応への認識等について意見交換を行った。
 
・北朝鮮による砲撃に対して韓国軍が反撃することは、経済的にマイナスであると考える国民も多いが、そのような認識は持っておらず、明らかに経済よりも上位に来る問題であるとの見解を示した。北朝鮮の砲撃が今後も続く可能性はあり、その場合しかるべき反撃をすれば、東アジアにおける軍事情勢が不安定になることは十分認識しているが、それよりも韓国民の自尊心の方が重要であるとの見解を示した。
・金正恩氏への権力継承については、過去金正日氏の権力移行時に、1970年代には板門店事件、1980年代には大韓航空機爆破事件が発生した等、予想もできないことを数々引き起こしてきた。北朝鮮は今回の金正恩氏への権力移行時も様々な挑発をしてくると考えているとの見解を示した。
・朝鮮半島有事に際して、自衛隊を韓国に派遣することが検討されているが、まずは他の分野で軍事的な協力を進めるべきであるとの見解を示した。また、韓国領土に自衛隊が入るには協定が必要になってくるが、まだその段階ではないとの見解を示した。しかし、朝鮮半島有事が発生した場合、日米韓で緊密に連携し対応すべきであるとの見解を示した。
・中国は、北朝鮮に関する外交的な制裁に関しては反対をする。統一によって朝鮮半島に強大な国家ができることは中国にとって不利益であり、現状維持を望んでいるであろうとの見解を示した。 
 
○我が方からは、北朝鮮による延坪島砲撃は暴挙であり、韓国政府を強く支持し、我が国としてできることをしっかり検討していく旨伝えた。我が国では、尖閣諸島沖事案や北方領土問題等で、領土、島嶼防衛に関心が高くなっている。東アジアの安定を守るためには、日米韓が一体となって協力していく必要があり、韓国とは竹島等デリケートな問題も抱えているが、大きな目標の為に共に協力していきたい旨伝えた。
 
5)鄭柄国(チョン・ビョングック)放送通信常任委員長(日韓議員連盟安保・外交委員長)
 延坪島砲撃を受けての韓国の対応政策等について、議会で常任委員長の職にある鄭柄国議員と意見交換を行った。
 
・議員自身が海兵隊出身であり、現在韓国の国会議員に8名の出身者がいる。海兵隊は極めて過酷な訓練に耐え抜いている屈強な軍隊組織であるが、もはや精神論だけで対応できる局面ではないと考えており、西海を中心に、島嶼防衛に関する海兵隊の重点的整備等を国防委員長を中心に進めているとの説明を受けた。
・今回の砲撃で被災者が発生したが、南北対立にあるとはいえ、まさか軍事的衝突は起きないであろうと安堵していた韓国民の意識を大きく変えた事は、唯一得られた利点であるとの見解を示した。
・日韓の連携は極めて重要であるとの考えを示したうえで、今般大きな関心事となっている朝鮮王朝儀軌等に関して韓国民は大きな期待を寄せているとの見解を示した。
 
○我が方からは、将来的には日本にも機動性のある海兵隊部隊をつくることを検討する必要性があるとの見解を伝えた。また、我が国も尖閣諸島沖事案等を始め島嶼防衛に関して重点的に取り組む必要性があるとの見解を示した。朝鮮王朝儀軌等の引き渡しについては、臨時国会の終盤に政府から突如提示された条約であり、我が党として十分な議論をする時間が全くなかったことを伝えた上で、次期通常国会では十分な審議を行った上でしかるべき対応をしたい旨伝えた。
 
6)白善燁(ペク・ソニョプ)将軍
 白善燁予備役陸軍大将と、朝鮮半島情勢等について意見交換を行った。
 
・金大中、盧武鉉政権により、北朝鮮に対する太陽政策が取られたが、北朝鮮への支援が核開発や兵器の製造に援用され、結果的には今回のような事態に及んでいることから、太陽政策は間違いであったとの見解を示した。
・11月にワシントンで日米韓の外相会談が行われたが、今後も3カ国の緊密な関係は必ず維持していかなければならず、また、東アジアの共産化を防ぐためにも、日米韓の果たすべき役割は大きいとの見解を示した。
・国連軍から韓国軍への指揮権移行が盧武鉉政権で合意されたが、向こう3年間延期されることが決まった。これは、韓国の安全保障を考えた場合、評価できるとの見解を示した。
 
○我が方からは、日米韓の軍事的な協力関係は極めて重要であるとの見解を示した。また、防衛大学校等への韓国軍の留学生受け入れを始めとした日韓防衛協力に尽力されてきた白善燁氏に感謝の意を伝えるとともに、今後も日韓防衛交流を様々なレベルで拡充していくべきだとの考えを伝えた。
 
7)戦争記念館視察
 当初予定していた延坪島視察が、当日の強風及び高波によりフェリーが欠航となったことから、殉職した海兵隊員の名が刻まれる戦争記念館の慰霊碑に献花を行った。
 また、韓国哨戒船天安撃沈事案での北朝鮮製によると考えられるハングル文字が刻まれた魚雷等を視察した。
  
 
6 考 察
 今回の延坪島砲撃は、韓国領土によるものであり韓国軍人2名、民間人2名の死者を出しており、今までの軍事的挑発とは意を異にするものである。
 訪韓団は、亡くなった方々に対して哀悼の意を伝え、北朝鮮の暴挙を厳しく非難するとともに、韓国政府の立場を全面的に支持する旨を伝えた。
 意見交換した与党ハンナラ党議員、政府高官、軍高官ともに、韓国哨戒船天安撃沈事案に続き、北朝鮮が延坪島を砲撃したことを軍事的に深刻に受け止めており、また、今後も北朝鮮による突発的な攻撃の可能性を認識しており、島嶼防衛等に重点を置くとともに、在韓国米軍との連携をさらに強めていかなければならないとの認識を持っていた。
 また、金正恩氏への権力継承に関しては、総じて国会議員、政府ともに確たる情報を持ち得ておらず、評価は難しいとのことであり、現状は分析を進めているとの事であった。
 北朝鮮に最も影響力を持つ中国に関しては、中国にとっての国益を考えた場合、朝鮮半島が統一されることは望ましくなく、現状維持を望んでいるのであろうとの見解が多数示され、我が国としても6カ国協議等を始めとした北朝鮮問題に関する中国との折衝に関しては、日米韓が連携を強めた上で対応していく必要があると考える。
 また、韓国の軍事的な危機は、当然日本にも及ぶものであり、今後は韓国とより強固な協力体制の構築、さらには米国を加えた3カ国による連携、軍事的協力の強化が必要であると考える。

 
   

【意見交換】(田麗玉議員と意見交換する訪韓団) 
 (金章洙議員と意見交換する訪韓団)

 (鄭柄国議員と意見交換する訪韓団)
  (白善燁将軍と意見交換する訪韓団)

 
 

【戦争記念館視察】(慰霊碑に献花する訪韓団)

 (韓国哨戒船天安が被弾した魚雷)
 

(ハングル文字で「1」と書かれている)